L-Triangle!4-1
- 2014/05/20
- 21:05
歓喜が、満ち溢れていた。老いも若きも、心の底から笑い、お祭り騒ぎに興じている。いや、それは喜びではない、狂気だ。建物の陰から様子をうかがいつつ、彼女は唇を噛んだ。広場の高台では、身なりのいい男が演説をしている。その顔には、見覚えがあった。隣国の領主だ。何もできずにただ震えていただけの、臆病者。「ご覧ください、皆さん!」隣国の領主が、ある一点を指し示す。広場の注目が、そこへと集中した。それは、巨大な...
L-Triangle!4-2
- 2014/05/23
- 20:20
1と2が、ごろつき三人組に出会ったのと同じ頃、3は教会にいた。礼拝堂では、休憩中のシスターたちが、噂話に花を咲かせている。「それでね、そのひとがすっごくかっこよかったのよ!」シスターのうちの一人が、頬を紅潮させながら話す。本日の話題の中心は、彼女のようだ。「へえ……私も会ってみたいなあ」羨ましそうに、他のシスターたちが彼女を見る。3は、彼女たちに声をかけた。「やあ、君たち、楽しそうだね」「あ、フォー...
L-Triangle!4-3
- 2014/05/26
- 20:41
夕焼けが街を赤く染め始めた頃、屋敷に戻ってきた1と2は、玄関先で3にばったりと出くわした。「やあ。おかえり」にっこり笑って、3が言う。くすぐったいような、居心地の悪さを感じて1は顔をしかめた。「ここは俺らの家じゃねえだろ」「どうでもいいじゃねえか、そんなこと」1と似た感想を持ったもののあえて彼に同意せず、2は玄関の扉を開けた。広間へ移動し、各々が定位置につく。1が露店で買ってきた品物に目をつけてい...
L-Triangle!4-4
- 2014/05/28
- 20:46
「へくしっ!!」2の世界の地獄の中枢。主の盛大なくしゃみが、万魔殿の執務室に響き渡った。「お?どうした?風邪でも引いたか?」ちょうど出先から戻った2の親友が、2を気遣う。鼻をさすりながら、2は毒づいた。「アホぬかせ。万年、コキュートスの氷に浸かってるやつらの相手をしているこの俺が、風邪なんか引くわけねえだろが」「だよなあ」2の返事に、親友が苦笑する。コキュートスとは、地獄の最下層にある場所で、決し...
L-Triangle!4-5
- 2014/05/30
- 20:48
教会では、ちょうど早朝のミサが終わったところだった。神や天界が存在しないので、色々と曖昧なところがあるこの世界の宗教だが、形式的なものは一応あるらしい。3は、礼拝堂にいた顔見知りの神官に声をかけた。初老の神官は、3のいつになくあらたまった様子を察し、彼を相談室へと案内する。「お忙しいところ、すみません」木製の椅子に腰かけ、3は頭を下げた。向かいに座り、神官はゆったりと首を振る。「いえいえ。何でも相...