L-Triangle!8-3
- 2014/11/24
- 20:15
異世界は、2の世界のように電気が普及していない。そのため、夜になると重苦しい闇に包まれる。それが、人が住む街中ではなく、森の奥深くならばなおさらだ。しかし、この日、森は非常に明るかった。村人たちが持つたいまつの光が、方々を照らし出している。彼らが向かう先は、ひとつだった。
「あったぞ……あそこだ!」
先頭を歩いていた村人が、前方を指さす。そこにあったのは、六角形の穴に取り囲まれた、独特のデザインの建造物……巨大な、蜂の巣だった。大きさは、ちょっとした屋敷ほどもある。
「よし、全員、火矢を放て!」
村長が、その場にいる者たちに指示する。それと同時に、一斉射撃が始まった。燃え上がる蜂の巣から、カラスほどの大きさの巨大な蜂が出現し、村人に襲いかかる。ひるまず、村人たちは巨大蜂と交戦した。
「ここが正念場だ!女王蜂が焼け死ねば、雑魚は消滅する!」
村長は、懸命に仲間を鼓舞する。蜂の巣の状況を観察していた村人の一人が、驚愕の声を上げた。
「火が、消えていく……!?」
その報告を聞き、村人たちはあわてて巣の方を見る。蜂の巣は、そのほとんどが燃え尽きていたものの、中央の部分は無傷で残っていた。
「もう一度、火矢を……!」
村長が、焦りを感じつつも叫ぶ。だが、そこまでだった。蜂の巣から、高濃度のエネルギー波が放たれたのである。その破壊力は、村人を含めた周囲を、一瞬で灰燼と化すほどの威力だった。
全ての生命が絶えて、辺りは静寂に包まれる。その沈黙が永遠に続くかと思われたとき、蜂の巣の中からふたつの人影が姿を現した。ひとつは、人間ほどの大きさの蜂であり、顔だけが美しい女性の姿をしている。もうひとつは、銀色の触覚を生やした、髪の長い少女だった。
「あーあ、見つかっちゃったね」
少女が、蜂の女性……女王蜂に、話しかける。そこには、いたずらがばれた子どものような無邪気さがあった。
「仕方がありませんわ。この近くに、村人たちが本拠地としている村があります。そこで補給をすませて、次の場所へ行きましょうよ」
女王蜂は、美少女にそっと寄り添った。その甘えるような仕草に目を細め、美少女は女王蜂の腰に手を回す。月光が差し込む中、二人は口づけを交わした。
そしてこの夜、この近辺の村は壊滅した。村中の生き物が精気を吸い尽くされ、ミイラとなって転がっているのが発見されるのは、だいぶ後のこととなる。その頃には、犯人の姿はすでにこの地にはなかった。
人を乗せることができるほど巨大な鳥が、天空へと飛び立つ。この鳥は、エルファラ教会で飼育されているもので、神鳥と呼ばれていた。空を飛ぶことができない人間たちにとって、貴重な移動手段であるものの、よほどの緊急事態でない限り、利用できないことになっている。魔王襲撃のどさくさに紛れて、ロードは神鳥の持ち出し許可を得た。目的は辺境の視察という、緊張感に欠けるものだが、利用できるものは利用しないと損である。
「まだ着かないの」
「もう少しだよ」
ロードの背後で、リルが文句を言う。出発してそれほど時間が経っていないのに急かされるのは不本意だったが、口論をする気はないので、ロードは無難な返答をした。
機嫌の悪さを全開にするリルをなだめすかしながら、空を進んでいく。せっかくのフライトなのに、これでは楽しさも半減してしまう。ロードがげんなりし始めた頃に、ようやく目的地が見えた。
「……ああ、あの街だ。どうせだから、派手にいこうか」
溜まっていた鬱憤を晴らすように、ロードは神鳥の高度を下げた。大きく旋回しながら、鳥はナンナルの中央広場へ着陸する。当然、広場は大騒ぎになった。
「魔物だー!!」
「魔物が襲ってきた!!」
血相を変えて、人々が逃げ惑う。予想外の反応に、ロードは困惑した。てっきり歓待されると思ったのに、逆効果だったようだ。
「神鳥は、教会では神の遣いと呼ばれているありがたいものなのに……。まあ、こんな辺境じゃ見る機会もないから、しょうがないか……」
混乱する人々を見物しながら、ロードはぼやく。そんな彼のわき腹を、リルがひじでつついた。
「何やってるの。ただ目立っただけじゃない」
「ごめんごめん。この場はちゃんと収めるからさ」
リルの冷視線を浴びながら、ロードは神鳥から降りた。そして、よく通る声で、広場全体に呼びかける。
「みなさん、お騒がせしてすみません」
彼の声は、あわてふためく人々の耳に届いたらしい。騒ぐのをやめて、彼らは一斉に、ロードの方を見た。
「……人だ」
「人が鳥に乗って……まさか!」
「どなたか、道案内を頼めませんか?」
にっこり笑って、ロードは人々に問う。そうしているうちに、騒ぎを聞きつけて神官長・マトフィイがやってきた。
「何と……!こんな辺境の街で神鳥の姿を拝見できるとは……」
神鳥を見るなり、マトフィイが驚きの声を上げる。さすがに教会に従事する彼は、神鳥の存在を知っていた。
「僕も、神鳥に乗ることはめったにないので、ついはしゃいでしまいました」
マトフィイの前に進み出て、ロードは照れたように笑いかける。彼がエルファラ教会総本山の者だと察し、マトフィイは姿勢を正した。
「おお、名乗るのが遅れました。私は、マトフィイ。この街の教会の神官長を務めております」
「初めまして、神官長様。ロードと申します」
マトフィイに倣い、ロードも自己紹介をする。彼の名を聞いた途端、神官長は瞠目した。
「ロード……?まさか、君は、勇者ロードか!」
「おや、ご存知でしたか」
「ああ、聞いていますよ。エルファラ騎士団の最高指揮官、正義の中の正義・勇者ロードのことは!」
マトフィイが、大げさな身振りで感激を表現する。それを聞いて、街の人々もどよめいた。
「そんな……肩書が仰々しいだけで、僕自身は大したことはありませんよ」
我ながらわざとらしいと思いつつも、ロードは謙遜する。望んだような展開になり、彼としては満足だった。一方、リルはというと、離れたところでそっぽを向いている。他人のふりをしておきたいとでもいうのだろうか。
「ロード殿が、なぜこのような辺境に!?まさか、この近くに魔王が現れたのですか!?」
世界的な有名人を前に放心していたマトフィイは、我に返り、表情を引き締めた。ロードほどの勇者が、単に観光をしにこんな田舎街に来るとは、さすがに彼も思わない。探るような視線を受けて、ロードは首を振った。
「いえ、そういうわけではなくて……ちょっと、会いたい人物がいまして」
「会いたい人物……とは?」
神妙な顔つきで、マトフィイが尋ねる。人々が息を呑む中で、ロードはここに来た目的を告げた。
「カインという方がどこに住んでいるのか、ご存じありませんか?」
ロードのせいでナンナルが大騒ぎになっている頃、街外れにある屋敷では、ちょうど2が自分の世界から来たところだった。いつも通りに次元を越えて、二階の空き部屋に降り立った彼は、街の雰囲気がいつもと違うことにすぐ気づいた。
「何だか、表が騒がしいな……?」
首をかしげつつ、階段を下りていく。それを待っていたかのように、玄関で呼び鈴が鳴った。
「客か?何でいきなり……」
怪訝な顔で、扉を開ける。そこに立っていたのは、見覚えがない青年だった。質のいい純白の軍服を着こなした、爽やかな雰囲気の青年が、きらきらした目を2に向けてくる。年の頃は、二十代前半といったところか。彼の後方では、野次馬が大量に群れを成し、事の成り行きを見守っていた。
「皆さん、案内をありがとうございました~」
野次馬たちに向かって、客人がにこやかに手を振る。黄色い悲鳴が、群衆から返ってきた。
「誰だお前」
状況についていけずに戸惑いつつ、2は客人に問いかける。
「君が、カイン?」
2の質問には答えず、客人は彼のことを上から下までじろじろと見回した。その無遠慮な態度に、2は気分を害する。
「だったら何だよ」
ぶっきらぼうに、返事を返す。その途端、客人は、顔を輝かせて2の手を握りしめた。
「初めまして、僕は勇者ロード!カイン、僕と一緒に世界を救おう!」
「はあ!?」
唐突な発言をされて、2は反射的に彼の手を振り払う。拒絶されたことを気にも留めずに、ロードは身を乗り出した。
「だって、君がこの街の勇者様なんだろう?」
「違うっつーの。俺はただの一般人だ!」
決めつけるようなロードに対し、2はあわてて首を振った。今まで、何人もの勇者がこの屋敷を訪れたが、初対面の段階でストレートに聞かれたのは初めてだ。
「隠さなくてもいいよ、僕にはわかっている」
馴れ馴れしく、ロードが2の肩に手を置いてくる。その手もまた、2によってはたき落とされた。
「何を根拠に自信満々なんだ、お前」
「それはもちろん……正義の勘だよ」
「勘かよ!?つまり、根拠なしじゃねえか!」
なぜか自信満々なロードに、2は、ついに声を荒げた。これが全くお門違いの推測ならば笑い飛ばすだけだが、真実を突いているのでたちが悪い。
「僕の正義の心が、ぎゅんぎゅんきてるんだ!それ以外に問題あるかい!?」
「大ありだろ!」
胸に手を当てて身をくねらせるロードを怒鳴りつけたところで、野次馬たちがざわついている声が、2の耳に入った。
「あれが、勇者様だって……?」
「勇者ロードが言ってるんだから、そうなのかも……」
野次馬たちの注目が、ロードと2に集中する。このまま、一挙一動を観察されていては、非常に具合が悪い。
「……ギャラリーがうっとうしい。とにかく、中に入れ」
嘆息して、2はロードを屋敷に招き入れた。お邪魔します、と形だけあいさつをして、ロードはずかずかと中へ入っていく。
今回の来訪者は一筋縄ではいかないということを、2はうすうす感じていた。
「あったぞ……あそこだ!」
先頭を歩いていた村人が、前方を指さす。そこにあったのは、六角形の穴に取り囲まれた、独特のデザインの建造物……巨大な、蜂の巣だった。大きさは、ちょっとした屋敷ほどもある。
「よし、全員、火矢を放て!」
村長が、その場にいる者たちに指示する。それと同時に、一斉射撃が始まった。燃え上がる蜂の巣から、カラスほどの大きさの巨大な蜂が出現し、村人に襲いかかる。ひるまず、村人たちは巨大蜂と交戦した。
「ここが正念場だ!女王蜂が焼け死ねば、雑魚は消滅する!」
村長は、懸命に仲間を鼓舞する。蜂の巣の状況を観察していた村人の一人が、驚愕の声を上げた。
「火が、消えていく……!?」
その報告を聞き、村人たちはあわてて巣の方を見る。蜂の巣は、そのほとんどが燃え尽きていたものの、中央の部分は無傷で残っていた。
「もう一度、火矢を……!」
村長が、焦りを感じつつも叫ぶ。だが、そこまでだった。蜂の巣から、高濃度のエネルギー波が放たれたのである。その破壊力は、村人を含めた周囲を、一瞬で灰燼と化すほどの威力だった。
全ての生命が絶えて、辺りは静寂に包まれる。その沈黙が永遠に続くかと思われたとき、蜂の巣の中からふたつの人影が姿を現した。ひとつは、人間ほどの大きさの蜂であり、顔だけが美しい女性の姿をしている。もうひとつは、銀色の触覚を生やした、髪の長い少女だった。
「あーあ、見つかっちゃったね」
少女が、蜂の女性……女王蜂に、話しかける。そこには、いたずらがばれた子どものような無邪気さがあった。
「仕方がありませんわ。この近くに、村人たちが本拠地としている村があります。そこで補給をすませて、次の場所へ行きましょうよ」
女王蜂は、美少女にそっと寄り添った。その甘えるような仕草に目を細め、美少女は女王蜂の腰に手を回す。月光が差し込む中、二人は口づけを交わした。
そしてこの夜、この近辺の村は壊滅した。村中の生き物が精気を吸い尽くされ、ミイラとなって転がっているのが発見されるのは、だいぶ後のこととなる。その頃には、犯人の姿はすでにこの地にはなかった。
人を乗せることができるほど巨大な鳥が、天空へと飛び立つ。この鳥は、エルファラ教会で飼育されているもので、神鳥と呼ばれていた。空を飛ぶことができない人間たちにとって、貴重な移動手段であるものの、よほどの緊急事態でない限り、利用できないことになっている。魔王襲撃のどさくさに紛れて、ロードは神鳥の持ち出し許可を得た。目的は辺境の視察という、緊張感に欠けるものだが、利用できるものは利用しないと損である。
「まだ着かないの」
「もう少しだよ」
ロードの背後で、リルが文句を言う。出発してそれほど時間が経っていないのに急かされるのは不本意だったが、口論をする気はないので、ロードは無難な返答をした。
機嫌の悪さを全開にするリルをなだめすかしながら、空を進んでいく。せっかくのフライトなのに、これでは楽しさも半減してしまう。ロードがげんなりし始めた頃に、ようやく目的地が見えた。
「……ああ、あの街だ。どうせだから、派手にいこうか」
溜まっていた鬱憤を晴らすように、ロードは神鳥の高度を下げた。大きく旋回しながら、鳥はナンナルの中央広場へ着陸する。当然、広場は大騒ぎになった。
「魔物だー!!」
「魔物が襲ってきた!!」
血相を変えて、人々が逃げ惑う。予想外の反応に、ロードは困惑した。てっきり歓待されると思ったのに、逆効果だったようだ。
「神鳥は、教会では神の遣いと呼ばれているありがたいものなのに……。まあ、こんな辺境じゃ見る機会もないから、しょうがないか……」
混乱する人々を見物しながら、ロードはぼやく。そんな彼のわき腹を、リルがひじでつついた。
「何やってるの。ただ目立っただけじゃない」
「ごめんごめん。この場はちゃんと収めるからさ」
リルの冷視線を浴びながら、ロードは神鳥から降りた。そして、よく通る声で、広場全体に呼びかける。
「みなさん、お騒がせしてすみません」
彼の声は、あわてふためく人々の耳に届いたらしい。騒ぐのをやめて、彼らは一斉に、ロードの方を見た。
「……人だ」
「人が鳥に乗って……まさか!」
「どなたか、道案内を頼めませんか?」
にっこり笑って、ロードは人々に問う。そうしているうちに、騒ぎを聞きつけて神官長・マトフィイがやってきた。
「何と……!こんな辺境の街で神鳥の姿を拝見できるとは……」
神鳥を見るなり、マトフィイが驚きの声を上げる。さすがに教会に従事する彼は、神鳥の存在を知っていた。
「僕も、神鳥に乗ることはめったにないので、ついはしゃいでしまいました」
マトフィイの前に進み出て、ロードは照れたように笑いかける。彼がエルファラ教会総本山の者だと察し、マトフィイは姿勢を正した。
「おお、名乗るのが遅れました。私は、マトフィイ。この街の教会の神官長を務めております」
「初めまして、神官長様。ロードと申します」
マトフィイに倣い、ロードも自己紹介をする。彼の名を聞いた途端、神官長は瞠目した。
「ロード……?まさか、君は、勇者ロードか!」
「おや、ご存知でしたか」
「ああ、聞いていますよ。エルファラ騎士団の最高指揮官、正義の中の正義・勇者ロードのことは!」
マトフィイが、大げさな身振りで感激を表現する。それを聞いて、街の人々もどよめいた。
「そんな……肩書が仰々しいだけで、僕自身は大したことはありませんよ」
我ながらわざとらしいと思いつつも、ロードは謙遜する。望んだような展開になり、彼としては満足だった。一方、リルはというと、離れたところでそっぽを向いている。他人のふりをしておきたいとでもいうのだろうか。
「ロード殿が、なぜこのような辺境に!?まさか、この近くに魔王が現れたのですか!?」
世界的な有名人を前に放心していたマトフィイは、我に返り、表情を引き締めた。ロードほどの勇者が、単に観光をしにこんな田舎街に来るとは、さすがに彼も思わない。探るような視線を受けて、ロードは首を振った。
「いえ、そういうわけではなくて……ちょっと、会いたい人物がいまして」
「会いたい人物……とは?」
神妙な顔つきで、マトフィイが尋ねる。人々が息を呑む中で、ロードはここに来た目的を告げた。
「カインという方がどこに住んでいるのか、ご存じありませんか?」
ロードのせいでナンナルが大騒ぎになっている頃、街外れにある屋敷では、ちょうど2が自分の世界から来たところだった。いつも通りに次元を越えて、二階の空き部屋に降り立った彼は、街の雰囲気がいつもと違うことにすぐ気づいた。
「何だか、表が騒がしいな……?」
首をかしげつつ、階段を下りていく。それを待っていたかのように、玄関で呼び鈴が鳴った。
「客か?何でいきなり……」
怪訝な顔で、扉を開ける。そこに立っていたのは、見覚えがない青年だった。質のいい純白の軍服を着こなした、爽やかな雰囲気の青年が、きらきらした目を2に向けてくる。年の頃は、二十代前半といったところか。彼の後方では、野次馬が大量に群れを成し、事の成り行きを見守っていた。
「皆さん、案内をありがとうございました~」
野次馬たちに向かって、客人がにこやかに手を振る。黄色い悲鳴が、群衆から返ってきた。
「誰だお前」
状況についていけずに戸惑いつつ、2は客人に問いかける。
「君が、カイン?」
2の質問には答えず、客人は彼のことを上から下までじろじろと見回した。その無遠慮な態度に、2は気分を害する。
「だったら何だよ」
ぶっきらぼうに、返事を返す。その途端、客人は、顔を輝かせて2の手を握りしめた。
「初めまして、僕は勇者ロード!カイン、僕と一緒に世界を救おう!」
「はあ!?」
唐突な発言をされて、2は反射的に彼の手を振り払う。拒絶されたことを気にも留めずに、ロードは身を乗り出した。
「だって、君がこの街の勇者様なんだろう?」
「違うっつーの。俺はただの一般人だ!」
決めつけるようなロードに対し、2はあわてて首を振った。今まで、何人もの勇者がこの屋敷を訪れたが、初対面の段階でストレートに聞かれたのは初めてだ。
「隠さなくてもいいよ、僕にはわかっている」
馴れ馴れしく、ロードが2の肩に手を置いてくる。その手もまた、2によってはたき落とされた。
「何を根拠に自信満々なんだ、お前」
「それはもちろん……正義の勘だよ」
「勘かよ!?つまり、根拠なしじゃねえか!」
なぜか自信満々なロードに、2は、ついに声を荒げた。これが全くお門違いの推測ならば笑い飛ばすだけだが、真実を突いているのでたちが悪い。
「僕の正義の心が、ぎゅんぎゅんきてるんだ!それ以外に問題あるかい!?」
「大ありだろ!」
胸に手を当てて身をくねらせるロードを怒鳴りつけたところで、野次馬たちがざわついている声が、2の耳に入った。
「あれが、勇者様だって……?」
「勇者ロードが言ってるんだから、そうなのかも……」
野次馬たちの注目が、ロードと2に集中する。このまま、一挙一動を観察されていては、非常に具合が悪い。
「……ギャラリーがうっとうしい。とにかく、中に入れ」
嘆息して、2はロードを屋敷に招き入れた。お邪魔します、と形だけあいさつをして、ロードはずかずかと中へ入っていく。
今回の来訪者は一筋縄ではいかないということを、2はうすうす感じていた。
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- テーマ:自作小説(ファンタジー)
- ジャンル:小説・文学
- カテゴリ:L-Triangle!8
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