L-Triangle!第一部最終話-2
- 2015/02/19
- 20:30
教会で無事に仕事の報告を終えて、3は街の大通りを歩いていた。頃合いを見て他のルシファー二人と合流しようと様子を窺がう彼の頭上に、突然大きな影が差す。見上げると、多くの鳥がナンナル上空を旋回していた。
「な、何だ!?魔物か!?」
「いや、違う!神鳥だ!」
「本当だ、見覚えがあるぞ!」
3と同様、異変に気づいた通行人たちが、口々に騒ぎ立てる。
「神鳥……?何だか、聞いたことがあるような」
彼らの会話の中の、気になる単語を拾い上げ、3は首をひねる。ナンナルの人々が神鳥を目にするのは、実はこれが初めてではない。以前、勇者ロードがこの街を訪れた際、彼は神鳥に乗ってやってきたのだ。そして、その事件の際に、3は多忙のためこの世界に来ていなかった。
「神鳥は、エルファラ教会の神の遣いだよ。神に選ばれし者だけが、その背に乗ることを許されているというね」
「神官長様……」
たまたま通りがかった神官長マトフィイが、3の疑問に答えを与えた。いつもは快活な笑みを絶やさぬ偉丈夫も、異常事態を目の当たりにして厳しい表情になっている。
「私もかつて総本山にいたことがあるが、これほど多くの神鳥を見たのは初めてだ。一体、なぜ……」
人々が困惑する中、街の上空を旋回していた神鳥のうちの一羽が、大きく高度を下げた。鳥は大きな翼をはためかせながら、3の目の前に着陸する。人々が驚く中、鳥に乗っていた人物が、身軽な動作で地面に降り立った。赤みがかった長い髪がひときわ目を惹く、美しい女性だ。身にまとう白い軍服が、彼女を天の遣いであるかのように錯覚させる。
「君は……!」
女性の顔を見て、3は目を大きく見開いた。彼女の名は、ケレン。以前、メイルードに行った際に仲良くなった女性のうちのひとりだ。
「会いたかったわ、フォース」
3の動揺など歯牙にもかけず、ケレンはうっとりと目を細めて再会を喜ぶ。このような状況でなければ3も同じ感想を持っただろうが、今は彼女から情報を聞き出すのが先決だった。
「これはどういうことなんだ、ケレン!」
「そんな怖い顔をしないで。私が好きなのは優しいあなたなのだから」
警戒を隠そうともしない3を宥めるように、ケレンは彼の頬に触れる。
「総本山の方ですかな?」
男女のやり取りに割って入ったのは、マトフィイだった。声をかけられたケレンは、あっさりと3から手を引いた。ひとりの恋する女性から軍人の顔に戻り、マトフィイに向き直る。
「あなたが神官長マトフィイですね」
「いかにも」
「私はケレン。総本山に籍を置いてる神官です。今は、この神鳥部隊の指揮官という立場でここに来ました」
ケレンが、上空を指さす。思い思いに飛び回っていた神鳥たちは、街のあちこちに着陸し始めていた。まるでこの街を侵略しに来たかのような動きに、周囲の空気もぴりぴりしたものに変わる。
「神鳥部隊……神の剣と呼ばれた精鋭が、なぜこんな辺境に?」
探るような視線とともに、マトフィイが尋ねる。以前メイルードにいた彼は、神鳥部隊についてもわずかばかりの知識があった。件の部隊は、飛行能力を伴う点で他国の戦力とは一線を画しており、メイルードの軍の核を担う存在である。それゆえに、神鳥部隊が出撃するのは、よほどの緊急事態に限られるとされていた。
魔王の襲撃があったわけでもない、平和そのものの田舎街ナンナルには、どう考えても場違いな集団である。
「教祖シュトラーセ様の神託が下りました。このナンナルに、まもなく復活するエルファラ神を脅かす存在がいます」
「な、何ですと!?」
メイルードの意志を代弁するがごとく、ケレンが厳かに告げる。それを聞いて、マトフィイを含む周囲は大きくどよめいた。
「彼らを、即刻排除しなさい。さもなくば、街全体に神罰が下るでしょう」
「それは、誰のことを言っておられるのですかな?」
「この街のことをよく知るあなたならば、おおよその見当はついているのではありませんか」
身に覚えがない嫌疑をかけられ、マトフィイや街の者たちは戸惑いを隠せないでいる。皆がおろおろと辺りを見回す中で、ただ独り、3だけがケレンを見据えていた。教会が言う神を脅かす存在について、彼には心当たりがある。それは、彼を含む三人のルシファー達に他ならなかった。
「生憎ですが……私には、皆目見当がつきません。この街の住人は皆、平和を愛し、慎ましく暮らしておりますからな」
「神官長様……」
眉を寄せて、マトフィイはケレンに説明をする。3は、意外そうに彼の方を見た。ナンナルの街の人々について熟知している神官長ならば、ケレンが3や仲間たちのことを言っているのではないかとすぐに思い当たるはずだ。それをしないのは、神官長が彼ら三人を信頼している証拠である。
だが、神鳥部隊が神官長の言葉で引き下がることはありえない。ケレンの目つきが、鋭さを増した。
「そうですか。ならば、街全体が彼らの手に落ちたと判断してよろしいですね?」
「お、お待ちください!我々は、本当に何も知らないのです!」
相手の不興を買ったことを察し、マトフィイがあわてふためく。ケレンの横暴な振る舞いは止まらず、彼女は街のそこかしこに散開している教会騎士たちに命を下すべく片手を振り上げた。
「神鳥部隊、ただちに攻撃を……」
「待ってくれ、ケレン!」
ケレンの号令に従い、騎士たちが剣を抜く。ここまでされてはさすがに黙って見ているわけにもいかず、3は制止の声を上げた。彼がそうするのを待っていたかのように、ケレンは妖艶に微笑む。
「あら、何かしら?フォース」
「君が言っているのは、私たちのことなんだろう……?」
覚悟を決めて、3はケレンに尋ねる。マトフィイを始めとした街の住人達の視線が自分に集中するのを感じたが、もう後戻りはできない。
「別に、私は貴方のことは何も言っていないわよ?」
「これ以上、神官長様や街の人たちを困らせるのはやめてくれ。私たちは、ここに住んでいるだけなんだ」
「そうですよ。フォース君は、教会に熱心に通う、信心深い若者です!」
獲物をいたぶる獣のように、ケレンは話をはぐらかす。彼女の言葉遊びに取り合わず、3は真摯に説得を始めた。マトフィイもまた、積極的に3を擁護しようと進み出る。
「確かに、フォースは素行に問題がないでしょうね。でも、他の二人はどうかしら。特にあのカインに関しては、魔物とつるんでナンナル侵攻を企てている……なんて報告もあるのよ……?」
「なっ……カイン君が、そんなことを!?」
ケレンからもたらされた情報は、街の人々を大いに仰天させた。彼らが何かを言い出すより先に、3は友人にかけられた疑惑を否定すべく声を荒げる。
「誤解だ!彼は、そんなことは考えていない!」
「魔物とつるんでいる、というところは否定しないのね」
「……それは」
2の擁護を冷静に受け止め、ケレンは的確な反論を返す。痛いところを突かれ、3は言葉に詰まった。ここでそういった反応をすることは明らかに不利だとわかっているものの、他のルシファー達と違い、平然と嘘を突き通す度胸は彼にはない。
「フォース……あなた、あの二人に騙されているのよ。彼らは、いい友達だとは思えないわ」
この場をどう切り抜けようかと懊悩する、3。憐れむように、ケレンは彼に近づいた。恋人と睦みあいをしているかのように、耳元で囁く。
「彼らではなく、私を選びなさい。そうすれば、貴方は見逃してあげる」
「…………」
彼女の誘いに、3は沈黙で応じた。己の優位を見せつけるように長い髪をかきあげ、ケレンは神鳥に再び騎乗する。
「私の言葉は、教祖シュトラーセ様のお言葉だと思いなさい。私を止めることは、エルファラ教会全体を敵に回すことに等しいのですよ」
「ぬう…………!」
念入りに釘をさし、ケレンは神鳥とともに飛び立つ。マトフィイは渋面のまま、それを見送るほかなかった。この世界で絶大な影響力を誇るエルファラ教会に逆らえば、ナンナルはた易く潰されてしまう。打開策を必死で練りながらも、今の彼らにできることは、ケレンの後を追うことだけだった。
神鳥部隊の指揮官であるケレンの来襲で大通りは騒然となったのだが、それ以上に混乱の最中にある一角がこの街にはあった。ルシファー達が本拠地としている街外れの屋敷は、今や騎士たちに完全に包囲されていたのである。屋敷の中に誰もいないと知るや、騎士たちは建物内に押し入り、家探しを始めた。
「何やってんだよ!ここはカイン兄ちゃんのうちだぞ!」
「そうだそうだ!どっか行けよ!」
何事かと街の人々が屋敷を遠巻きに見守る中、二人の少年が飛び出し、手近な騎士に食ってかかる。少年たちの名はピリポとイザク。以前、怪物に襲われたところを2に助けられたことがあり、恩人である彼のことを慕っていた。
「やかましいぞガキども!」
乱暴に、騎士は少年たちを突き飛ばす。地面にたたきつけられる寸前に、背後から伸びてきた細い腕が、彼らを受け止めた。振り返り、少年たちは安堵する。
「カイン兄ちゃん!」
「……何だこりゃあ……」
ピリポとイザクを起してやりながら、2は呆然と屋敷を見上げた。
「おい、人んちに何してやがる!」
怒りをあらわに、1が騎士たちを非難する。屋敷の周囲を巡回していた騎士たちは、待ちかねたといわんばかりに集まってきた。
「現れたな、邪神ども!」
敵意とともに、騎士たちが一斉に武器を1と2につきつける。さして動揺するふうもなく、二人は彼らに向かってメンチを切った。
「何してくれんだ、てめえら!」
「誰に向かってケンカ売ってるかわかってんのか、ああ?」
1と2に凄まれて、騎士たちはたじろぐ。言動だけならばそこらへんにいるちんぴらと大差ないが、彼らが纏う闘気が尋常なものではないことを、本能的に悟ったのだ。野次馬がぞくぞくと集まってくる中、他の者より身なりが優れた騎士が進み出た。騎士たちが、彼に向かって敬礼する。どうやら、部隊長の類いであるらしい。
「聞け!ナンナルの住人達よ!」
部隊長が、高らかに告げる。その言葉は、しきりにガン飛ばしてくるちんぴら二人ではなく、その背後にいる街の住人達に向けられていた。
「我らが神・エルファラ様が間もなく復活なさるということは、お前たちも知っているだろう!」
「エルファラ様の復活なら知ってるぞ」
「それが、この屋敷のやつらと何か関係があるのか?」
話を振られて、野次馬たちは顔を見合わせる。好奇の視線にさらされて不快さを感じた1は部隊長の胸ぐらを掴もうとするが、2がそれに気づいて止めた。この騎士たちは、どうやらエルファラ教会の手勢らしい。強大なバックボーンを持つ相手を無碍にするのは得策ではないと、彼は判断したのだった。1が舌打ちして手を引くのを確認し、部隊長は不敵に笑う。
「だが!このままでは神は我らの前に姿をお見せにならない!なぜか!?それは、この邪神どもが存在しているからだ!」
「はあ!?」
「何言ってんだ、俺らは何もしてねえだろが!」
自信ありげに、部隊長は断言した。野次馬たちのどよめきが、一層大きなものとなる。謂れなき嫌疑に二人は反論するものの、相手は微塵も退く気を見せない。
「とぼけても無駄だ、邪神ども!」
「俺らがそっちの神さんに何かしたっていう証拠でもあるのかよ?だったら、今すぐ見せてみろや!」
「いちゃもんつけてるだけだったらタダじゃおかねえぞ、てめえら!」
掴みかからんばかりの勢いで、1と2は部隊長に詰め寄る。敵意をむき出しにする彼らは、やはりちんぴらそのものだった。一瞬怯んだものの、気を取り直して部隊長は胸を張る。
「教祖様がそう仰っているのだ!エルファラ教会において、教祖シュトラーセ様は絶対!それが何よりの証拠だ!」
「そんなもん、何の根拠もねえだろ」
「……やっぱりあの時潰しときゃよかったぜ、このクソ教会」
自信に満ちた表情で、部隊長は言い放つ。そのあまりに稚拙な理論に、1は拍子抜けした。彼の隣では、2がぶつぶつと不平を述べている。この程度の相手ならばた易くやり込める事ができるとふんだ二人だったが、周囲のざわめきはなぜか増していた。
「教祖様の、ご神託が……?」
「そりゃ、大変なことでねえか……?」
青ざめて、野次馬たちがひそひそと囁き合う。彼らの声は、騒ぎの中心にいる1と2にも届いていた。
「おい、何か妙な感じじゃね……?」
街の人々の反応が思ったものと違うことに気づき、2は辺りを見回す。彼らが完全に自分たちの味方をしてくれることを期待しているわけではないが、騎士たちの理不尽な振る舞いを前にしても教会を信じようとする彼らに、2は戸惑いを隠せなかった。
もしもこのような事態が2の世界で起こった場合、教会の横暴を指摘する者は多くいただろう。だが、ここは異世界である。魔王の脅威にさらされた人々は、エルファラ教会に救いを求め、神を本気で信仰していた。それゆえに、教会と、その最高権力者である教祖の言葉は、この世の真理に等しいのだ。
「そんなの関係ねえよ。こいつらうっとうしいから、ぶっ飛ばしちまおうぜ」
元より街の住人達などどうでもいい1は、騎士たちに向かって構えをとる。戦いの気配を感じて街の人たちが大きく後退する中、高らかなハイヒールの音が割って入った。赤い髪の美女が、こちらへ向かって優雅に歩いてくる。
「おお、ケレン様!」
彼女の顔を見るや、部隊長は姿勢を正して敬礼した。相手が発した名に聞き覚えがあるのを感じ、1と2は小声で意見を交換する。
「ケレンって、聞いたことあるな」
「アレだ、ゾンビ姉ちゃん。フォースの彼女の」
「おー、いたいた、そんなのいた」
2に指摘され、1は思い出したように手を打つ。
以前、メイルードで彼女を巡る殺人事件が起こり、3が容疑者として拘束されたことがあった。3の嫌疑を晴らそうと二人が奮闘しているうちに、なぜか殺されたはずのケレンは生き返り、事件はうやむやのうちに解決したのだった。ゾンビというのは、彼女の不死身っぷりにちなんで2がつけたあだ名である。
そんなやり取りをしている間に、ケレンは彼らの目の前まで来ていた。
「お久しぶり。その節は、お世話になったわね」
「これはどういうことだよ?俺ら、教祖の恨みを買うようなことをした覚えはねえぞ」
親しげな友人に対するように、ケレンが挨拶をする。彼女とのんきに会談をする気にはとてもなれず、2は即座に本題に入った。彼の弁明を聞いて、ケレンはころころと笑う。
「あら、貴方がそれを言うの?邪神の名を騙り、邪教の信者たちを扇動しようとしていた貴方が」
「あいつ、そんなことしてたのか!?」
「何て恐れ多い……」
彼らの会話に聞き耳を立てていた野次馬たちから、非難の声が上がる。2は、胸中で舌打ちした。ケレンの言葉は確かに事実だが、その件についてはすでに解決しており、まさかこんなところで蒸し返されるとは思わなかった。
「アレは何つーか、もののはずみだ。真に受けてんじゃねっつの」
苦笑して、2は肩をすくめる。この程度で相手が引き下がるとは思えないが、何か行動しなければ向こうのペースに流されてしまう。
「つーか、ロードの野郎はどうしたよ。あいつ、確か騎士どもの上司だったろ?」
窮地を打開する術を探していた2は、ふと顔見知りの勇者のことを思い出す。2の記憶の中では、彼らに対してロードは友好的に接していた。この場にあの勇者がいないのは、どう考えても不自然である。
「勇者ロードなら、メイルードで待機しているわ。彼からの助力は、期待しないことね」
わずかばかりの希望の光を、ケレンはあっさりと掻き消した。神鳥部隊の襲撃がロードの指示によるものだということを、あえて言うつもりはない。下手に二人の敵意を煽ってメイルードに攻め込まれた場合、ただではすまないことは彼女にもわかっていた。
「それはさておき、教祖様のご神託が下ったのは、本当のことよ。教祖シュトラーセ様は、貴方たちがこの世界からいなくなることを望んでいるわ」
「だから何だってんだよ。どこにいようが、どこへ行こうが俺様の勝手だ」
ケレンに対し反論を述べたのは、1だった。彼にとっても、この世界はもはや簡単に縁を断ち切れる程度のものではなくなっている。
「貴方たちが事を荒立てるなら、この街全体も粛清対象にすると、仰せつかっているのだけれど」
「街全体を、粛清……!?」
「おい、どうなっちまうんだ!?まさか……」
「冗談じゃねえ!死にたくねえよ!」
実力行使を辞さない構えの1をあざ笑うかのように、ケレンは言葉を紡ぐ。彼女から発せられた宣告は、街の人々にも波紋を呼んだ。自分たちに危害が及ぶと察したナンナルの住人達は、恐怖のあまり混乱に陥る。
「てめ、卑怯だぞ!?」
パニックの輪が急速に広がっていくことに焦りを感じ、2はケレンを咎める。自分たちならばいかなる窮地に陥ろうとも何とかできるが、のどかな日常を送ってきたナンナルの人々は、脅しに対する耐性がない。
「貴方たちが二度とこの世界に来ないと誓うなら、それで事は丸く収まる。どう?」
「…………!」
自身が優位にあると確信したケレンが、条件を突きつけてくる。いつの間にか不利な状況に追い込まれた彼らは、二の句を告げなかった。彼らが手をこまねいているうちに、人々の恐慌は増していく。思い悩む2の上着の裾を、不安げな顔の少年たちが引っ張った。
「カイン兄ちゃん……いなくなったり、しないよね?」
「そうだよ、そんなのおかしいよ!だって、兄ちゃんは……」
「ピリポ!」
「イザク!こっちに来なさい!」
少年たちが何か言おうとするのを遮るように、二人の中年女性が彼らに駆け寄る。少年たちの母親と思しき女性たちは、必死の形相で彼らをルシファー達から引き離した。
「あ!離せよ!」
「兄ちゃん!カイン兄ちゃん!!」
ピリポとイザクは抵抗するが、子を想う母の力には敵わない。少年を抱えた母親たちは、雑踏の中へと姿を消した。
「貴方たちを慕ってくれている人々も、みんな道連れにするつもり?」
黙って少年たちを見送る2の背中に、ケレンがだめ押しをする。それをきっかけにして、人々はルシファー達の説得を始めた。
「そ……そうだ……あんたらがいなくなれば、俺達は死ななくて済むんだ……」
「た、助けてくれ!教会に従ってくれよ!」
「お願いします!小さな子供がいるんです!」
命乞いの声が、二人を包囲する。その中に顔見知りが何人かいることに気づき、2はもちろん、街の住人たちとさほど付き合いがない1ですら言葉を失った。
「な、何だ!?魔物か!?」
「いや、違う!神鳥だ!」
「本当だ、見覚えがあるぞ!」
3と同様、異変に気づいた通行人たちが、口々に騒ぎ立てる。
「神鳥……?何だか、聞いたことがあるような」
彼らの会話の中の、気になる単語を拾い上げ、3は首をひねる。ナンナルの人々が神鳥を目にするのは、実はこれが初めてではない。以前、勇者ロードがこの街を訪れた際、彼は神鳥に乗ってやってきたのだ。そして、その事件の際に、3は多忙のためこの世界に来ていなかった。
「神鳥は、エルファラ教会の神の遣いだよ。神に選ばれし者だけが、その背に乗ることを許されているというね」
「神官長様……」
たまたま通りがかった神官長マトフィイが、3の疑問に答えを与えた。いつもは快活な笑みを絶やさぬ偉丈夫も、異常事態を目の当たりにして厳しい表情になっている。
「私もかつて総本山にいたことがあるが、これほど多くの神鳥を見たのは初めてだ。一体、なぜ……」
人々が困惑する中、街の上空を旋回していた神鳥のうちの一羽が、大きく高度を下げた。鳥は大きな翼をはためかせながら、3の目の前に着陸する。人々が驚く中、鳥に乗っていた人物が、身軽な動作で地面に降り立った。赤みがかった長い髪がひときわ目を惹く、美しい女性だ。身にまとう白い軍服が、彼女を天の遣いであるかのように錯覚させる。
「君は……!」
女性の顔を見て、3は目を大きく見開いた。彼女の名は、ケレン。以前、メイルードに行った際に仲良くなった女性のうちのひとりだ。
「会いたかったわ、フォース」
3の動揺など歯牙にもかけず、ケレンはうっとりと目を細めて再会を喜ぶ。このような状況でなければ3も同じ感想を持っただろうが、今は彼女から情報を聞き出すのが先決だった。
「これはどういうことなんだ、ケレン!」
「そんな怖い顔をしないで。私が好きなのは優しいあなたなのだから」
警戒を隠そうともしない3を宥めるように、ケレンは彼の頬に触れる。
「総本山の方ですかな?」
男女のやり取りに割って入ったのは、マトフィイだった。声をかけられたケレンは、あっさりと3から手を引いた。ひとりの恋する女性から軍人の顔に戻り、マトフィイに向き直る。
「あなたが神官長マトフィイですね」
「いかにも」
「私はケレン。総本山に籍を置いてる神官です。今は、この神鳥部隊の指揮官という立場でここに来ました」
ケレンが、上空を指さす。思い思いに飛び回っていた神鳥たちは、街のあちこちに着陸し始めていた。まるでこの街を侵略しに来たかのような動きに、周囲の空気もぴりぴりしたものに変わる。
「神鳥部隊……神の剣と呼ばれた精鋭が、なぜこんな辺境に?」
探るような視線とともに、マトフィイが尋ねる。以前メイルードにいた彼は、神鳥部隊についてもわずかばかりの知識があった。件の部隊は、飛行能力を伴う点で他国の戦力とは一線を画しており、メイルードの軍の核を担う存在である。それゆえに、神鳥部隊が出撃するのは、よほどの緊急事態に限られるとされていた。
魔王の襲撃があったわけでもない、平和そのものの田舎街ナンナルには、どう考えても場違いな集団である。
「教祖シュトラーセ様の神託が下りました。このナンナルに、まもなく復活するエルファラ神を脅かす存在がいます」
「な、何ですと!?」
メイルードの意志を代弁するがごとく、ケレンが厳かに告げる。それを聞いて、マトフィイを含む周囲は大きくどよめいた。
「彼らを、即刻排除しなさい。さもなくば、街全体に神罰が下るでしょう」
「それは、誰のことを言っておられるのですかな?」
「この街のことをよく知るあなたならば、おおよその見当はついているのではありませんか」
身に覚えがない嫌疑をかけられ、マトフィイや街の者たちは戸惑いを隠せないでいる。皆がおろおろと辺りを見回す中で、ただ独り、3だけがケレンを見据えていた。教会が言う神を脅かす存在について、彼には心当たりがある。それは、彼を含む三人のルシファー達に他ならなかった。
「生憎ですが……私には、皆目見当がつきません。この街の住人は皆、平和を愛し、慎ましく暮らしておりますからな」
「神官長様……」
眉を寄せて、マトフィイはケレンに説明をする。3は、意外そうに彼の方を見た。ナンナルの街の人々について熟知している神官長ならば、ケレンが3や仲間たちのことを言っているのではないかとすぐに思い当たるはずだ。それをしないのは、神官長が彼ら三人を信頼している証拠である。
だが、神鳥部隊が神官長の言葉で引き下がることはありえない。ケレンの目つきが、鋭さを増した。
「そうですか。ならば、街全体が彼らの手に落ちたと判断してよろしいですね?」
「お、お待ちください!我々は、本当に何も知らないのです!」
相手の不興を買ったことを察し、マトフィイがあわてふためく。ケレンの横暴な振る舞いは止まらず、彼女は街のそこかしこに散開している教会騎士たちに命を下すべく片手を振り上げた。
「神鳥部隊、ただちに攻撃を……」
「待ってくれ、ケレン!」
ケレンの号令に従い、騎士たちが剣を抜く。ここまでされてはさすがに黙って見ているわけにもいかず、3は制止の声を上げた。彼がそうするのを待っていたかのように、ケレンは妖艶に微笑む。
「あら、何かしら?フォース」
「君が言っているのは、私たちのことなんだろう……?」
覚悟を決めて、3はケレンに尋ねる。マトフィイを始めとした街の住人達の視線が自分に集中するのを感じたが、もう後戻りはできない。
「別に、私は貴方のことは何も言っていないわよ?」
「これ以上、神官長様や街の人たちを困らせるのはやめてくれ。私たちは、ここに住んでいるだけなんだ」
「そうですよ。フォース君は、教会に熱心に通う、信心深い若者です!」
獲物をいたぶる獣のように、ケレンは話をはぐらかす。彼女の言葉遊びに取り合わず、3は真摯に説得を始めた。マトフィイもまた、積極的に3を擁護しようと進み出る。
「確かに、フォースは素行に問題がないでしょうね。でも、他の二人はどうかしら。特にあのカインに関しては、魔物とつるんでナンナル侵攻を企てている……なんて報告もあるのよ……?」
「なっ……カイン君が、そんなことを!?」
ケレンからもたらされた情報は、街の人々を大いに仰天させた。彼らが何かを言い出すより先に、3は友人にかけられた疑惑を否定すべく声を荒げる。
「誤解だ!彼は、そんなことは考えていない!」
「魔物とつるんでいる、というところは否定しないのね」
「……それは」
2の擁護を冷静に受け止め、ケレンは的確な反論を返す。痛いところを突かれ、3は言葉に詰まった。ここでそういった反応をすることは明らかに不利だとわかっているものの、他のルシファー達と違い、平然と嘘を突き通す度胸は彼にはない。
「フォース……あなた、あの二人に騙されているのよ。彼らは、いい友達だとは思えないわ」
この場をどう切り抜けようかと懊悩する、3。憐れむように、ケレンは彼に近づいた。恋人と睦みあいをしているかのように、耳元で囁く。
「彼らではなく、私を選びなさい。そうすれば、貴方は見逃してあげる」
「…………」
彼女の誘いに、3は沈黙で応じた。己の優位を見せつけるように長い髪をかきあげ、ケレンは神鳥に再び騎乗する。
「私の言葉は、教祖シュトラーセ様のお言葉だと思いなさい。私を止めることは、エルファラ教会全体を敵に回すことに等しいのですよ」
「ぬう…………!」
念入りに釘をさし、ケレンは神鳥とともに飛び立つ。マトフィイは渋面のまま、それを見送るほかなかった。この世界で絶大な影響力を誇るエルファラ教会に逆らえば、ナンナルはた易く潰されてしまう。打開策を必死で練りながらも、今の彼らにできることは、ケレンの後を追うことだけだった。
神鳥部隊の指揮官であるケレンの来襲で大通りは騒然となったのだが、それ以上に混乱の最中にある一角がこの街にはあった。ルシファー達が本拠地としている街外れの屋敷は、今や騎士たちに完全に包囲されていたのである。屋敷の中に誰もいないと知るや、騎士たちは建物内に押し入り、家探しを始めた。
「何やってんだよ!ここはカイン兄ちゃんのうちだぞ!」
「そうだそうだ!どっか行けよ!」
何事かと街の人々が屋敷を遠巻きに見守る中、二人の少年が飛び出し、手近な騎士に食ってかかる。少年たちの名はピリポとイザク。以前、怪物に襲われたところを2に助けられたことがあり、恩人である彼のことを慕っていた。
「やかましいぞガキども!」
乱暴に、騎士は少年たちを突き飛ばす。地面にたたきつけられる寸前に、背後から伸びてきた細い腕が、彼らを受け止めた。振り返り、少年たちは安堵する。
「カイン兄ちゃん!」
「……何だこりゃあ……」
ピリポとイザクを起してやりながら、2は呆然と屋敷を見上げた。
「おい、人んちに何してやがる!」
怒りをあらわに、1が騎士たちを非難する。屋敷の周囲を巡回していた騎士たちは、待ちかねたといわんばかりに集まってきた。
「現れたな、邪神ども!」
敵意とともに、騎士たちが一斉に武器を1と2につきつける。さして動揺するふうもなく、二人は彼らに向かってメンチを切った。
「何してくれんだ、てめえら!」
「誰に向かってケンカ売ってるかわかってんのか、ああ?」
1と2に凄まれて、騎士たちはたじろぐ。言動だけならばそこらへんにいるちんぴらと大差ないが、彼らが纏う闘気が尋常なものではないことを、本能的に悟ったのだ。野次馬がぞくぞくと集まってくる中、他の者より身なりが優れた騎士が進み出た。騎士たちが、彼に向かって敬礼する。どうやら、部隊長の類いであるらしい。
「聞け!ナンナルの住人達よ!」
部隊長が、高らかに告げる。その言葉は、しきりにガン飛ばしてくるちんぴら二人ではなく、その背後にいる街の住人達に向けられていた。
「我らが神・エルファラ様が間もなく復活なさるということは、お前たちも知っているだろう!」
「エルファラ様の復活なら知ってるぞ」
「それが、この屋敷のやつらと何か関係があるのか?」
話を振られて、野次馬たちは顔を見合わせる。好奇の視線にさらされて不快さを感じた1は部隊長の胸ぐらを掴もうとするが、2がそれに気づいて止めた。この騎士たちは、どうやらエルファラ教会の手勢らしい。強大なバックボーンを持つ相手を無碍にするのは得策ではないと、彼は判断したのだった。1が舌打ちして手を引くのを確認し、部隊長は不敵に笑う。
「だが!このままでは神は我らの前に姿をお見せにならない!なぜか!?それは、この邪神どもが存在しているからだ!」
「はあ!?」
「何言ってんだ、俺らは何もしてねえだろが!」
自信ありげに、部隊長は断言した。野次馬たちのどよめきが、一層大きなものとなる。謂れなき嫌疑に二人は反論するものの、相手は微塵も退く気を見せない。
「とぼけても無駄だ、邪神ども!」
「俺らがそっちの神さんに何かしたっていう証拠でもあるのかよ?だったら、今すぐ見せてみろや!」
「いちゃもんつけてるだけだったらタダじゃおかねえぞ、てめえら!」
掴みかからんばかりの勢いで、1と2は部隊長に詰め寄る。敵意をむき出しにする彼らは、やはりちんぴらそのものだった。一瞬怯んだものの、気を取り直して部隊長は胸を張る。
「教祖様がそう仰っているのだ!エルファラ教会において、教祖シュトラーセ様は絶対!それが何よりの証拠だ!」
「そんなもん、何の根拠もねえだろ」
「……やっぱりあの時潰しときゃよかったぜ、このクソ教会」
自信に満ちた表情で、部隊長は言い放つ。そのあまりに稚拙な理論に、1は拍子抜けした。彼の隣では、2がぶつぶつと不平を述べている。この程度の相手ならばた易くやり込める事ができるとふんだ二人だったが、周囲のざわめきはなぜか増していた。
「教祖様の、ご神託が……?」
「そりゃ、大変なことでねえか……?」
青ざめて、野次馬たちがひそひそと囁き合う。彼らの声は、騒ぎの中心にいる1と2にも届いていた。
「おい、何か妙な感じじゃね……?」
街の人々の反応が思ったものと違うことに気づき、2は辺りを見回す。彼らが完全に自分たちの味方をしてくれることを期待しているわけではないが、騎士たちの理不尽な振る舞いを前にしても教会を信じようとする彼らに、2は戸惑いを隠せなかった。
もしもこのような事態が2の世界で起こった場合、教会の横暴を指摘する者は多くいただろう。だが、ここは異世界である。魔王の脅威にさらされた人々は、エルファラ教会に救いを求め、神を本気で信仰していた。それゆえに、教会と、その最高権力者である教祖の言葉は、この世の真理に等しいのだ。
「そんなの関係ねえよ。こいつらうっとうしいから、ぶっ飛ばしちまおうぜ」
元より街の住人達などどうでもいい1は、騎士たちに向かって構えをとる。戦いの気配を感じて街の人たちが大きく後退する中、高らかなハイヒールの音が割って入った。赤い髪の美女が、こちらへ向かって優雅に歩いてくる。
「おお、ケレン様!」
彼女の顔を見るや、部隊長は姿勢を正して敬礼した。相手が発した名に聞き覚えがあるのを感じ、1と2は小声で意見を交換する。
「ケレンって、聞いたことあるな」
「アレだ、ゾンビ姉ちゃん。フォースの彼女の」
「おー、いたいた、そんなのいた」
2に指摘され、1は思い出したように手を打つ。
以前、メイルードで彼女を巡る殺人事件が起こり、3が容疑者として拘束されたことがあった。3の嫌疑を晴らそうと二人が奮闘しているうちに、なぜか殺されたはずのケレンは生き返り、事件はうやむやのうちに解決したのだった。ゾンビというのは、彼女の不死身っぷりにちなんで2がつけたあだ名である。
そんなやり取りをしている間に、ケレンは彼らの目の前まで来ていた。
「お久しぶり。その節は、お世話になったわね」
「これはどういうことだよ?俺ら、教祖の恨みを買うようなことをした覚えはねえぞ」
親しげな友人に対するように、ケレンが挨拶をする。彼女とのんきに会談をする気にはとてもなれず、2は即座に本題に入った。彼の弁明を聞いて、ケレンはころころと笑う。
「あら、貴方がそれを言うの?邪神の名を騙り、邪教の信者たちを扇動しようとしていた貴方が」
「あいつ、そんなことしてたのか!?」
「何て恐れ多い……」
彼らの会話に聞き耳を立てていた野次馬たちから、非難の声が上がる。2は、胸中で舌打ちした。ケレンの言葉は確かに事実だが、その件についてはすでに解決しており、まさかこんなところで蒸し返されるとは思わなかった。
「アレは何つーか、もののはずみだ。真に受けてんじゃねっつの」
苦笑して、2は肩をすくめる。この程度で相手が引き下がるとは思えないが、何か行動しなければ向こうのペースに流されてしまう。
「つーか、ロードの野郎はどうしたよ。あいつ、確か騎士どもの上司だったろ?」
窮地を打開する術を探していた2は、ふと顔見知りの勇者のことを思い出す。2の記憶の中では、彼らに対してロードは友好的に接していた。この場にあの勇者がいないのは、どう考えても不自然である。
「勇者ロードなら、メイルードで待機しているわ。彼からの助力は、期待しないことね」
わずかばかりの希望の光を、ケレンはあっさりと掻き消した。神鳥部隊の襲撃がロードの指示によるものだということを、あえて言うつもりはない。下手に二人の敵意を煽ってメイルードに攻め込まれた場合、ただではすまないことは彼女にもわかっていた。
「それはさておき、教祖様のご神託が下ったのは、本当のことよ。教祖シュトラーセ様は、貴方たちがこの世界からいなくなることを望んでいるわ」
「だから何だってんだよ。どこにいようが、どこへ行こうが俺様の勝手だ」
ケレンに対し反論を述べたのは、1だった。彼にとっても、この世界はもはや簡単に縁を断ち切れる程度のものではなくなっている。
「貴方たちが事を荒立てるなら、この街全体も粛清対象にすると、仰せつかっているのだけれど」
「街全体を、粛清……!?」
「おい、どうなっちまうんだ!?まさか……」
「冗談じゃねえ!死にたくねえよ!」
実力行使を辞さない構えの1をあざ笑うかのように、ケレンは言葉を紡ぐ。彼女から発せられた宣告は、街の人々にも波紋を呼んだ。自分たちに危害が及ぶと察したナンナルの住人達は、恐怖のあまり混乱に陥る。
「てめ、卑怯だぞ!?」
パニックの輪が急速に広がっていくことに焦りを感じ、2はケレンを咎める。自分たちならばいかなる窮地に陥ろうとも何とかできるが、のどかな日常を送ってきたナンナルの人々は、脅しに対する耐性がない。
「貴方たちが二度とこの世界に来ないと誓うなら、それで事は丸く収まる。どう?」
「…………!」
自身が優位にあると確信したケレンが、条件を突きつけてくる。いつの間にか不利な状況に追い込まれた彼らは、二の句を告げなかった。彼らが手をこまねいているうちに、人々の恐慌は増していく。思い悩む2の上着の裾を、不安げな顔の少年たちが引っ張った。
「カイン兄ちゃん……いなくなったり、しないよね?」
「そうだよ、そんなのおかしいよ!だって、兄ちゃんは……」
「ピリポ!」
「イザク!こっちに来なさい!」
少年たちが何か言おうとするのを遮るように、二人の中年女性が彼らに駆け寄る。少年たちの母親と思しき女性たちは、必死の形相で彼らをルシファー達から引き離した。
「あ!離せよ!」
「兄ちゃん!カイン兄ちゃん!!」
ピリポとイザクは抵抗するが、子を想う母の力には敵わない。少年を抱えた母親たちは、雑踏の中へと姿を消した。
「貴方たちを慕ってくれている人々も、みんな道連れにするつもり?」
黙って少年たちを見送る2の背中に、ケレンがだめ押しをする。それをきっかけにして、人々はルシファー達の説得を始めた。
「そ……そうだ……あんたらがいなくなれば、俺達は死ななくて済むんだ……」
「た、助けてくれ!教会に従ってくれよ!」
「お願いします!小さな子供がいるんです!」
命乞いの声が、二人を包囲する。その中に顔見知りが何人かいることに気づき、2はもちろん、街の住人たちとさほど付き合いがない1ですら言葉を失った。
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